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あんたのために書いてんじゃないんだからねっ

ショートストーリー&雑文。不定期で『タカッラマ・ラジュル』を連載中。

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祝☆『ドルフィン・ジャンプ』発売記念!~リュウグウ・ジャンプ

昔々でもない話。
ある時、村の青年・ルークは仕事を怠けて釣りをしておりました。
するとそこに中学生くらいの女の子がやってきました。

「助けて、お兄さん!イルカがいじめられているの!
その釣り竿、貸りるわよ!」

そういうと少女はルークから竿を奪い取り、駆け出してしまいました。
「あっ!」
ルークがあわてて後を追うものの、時すでに遅し。
少女は釣り竿を振り回し、黒ずくめの男たちをボッコボコにしているところでした。

「お、覚えてやがれ!」
古典的な捨て台詞とともに男たちは逃げていきました。

浜にはイルカが一体、横たわっています。
浜にイルカ?
釣竿を持った仁王立ちの少女?

何が何だかわからないままに、ルークは声をかけようとしましたが、
その時、妙な声が聞こえました。

「助けてくれてありがとう」

その声は少女のものではなく、まるでイルカから発せられたよう聞こえました。

「イルカが……しゃべった? まさか?」

パニくるルークに、
声の主(イルカ)は「しゃべっているのではない、心に語りかけているのだ」というような意味合いのことを、ルークに噛んで含めるように何度か説明するのでした。

「Oh!なんてことだ!」
「僕は竜宮から来たイルカのマックスといいます」
「私はカノンよ」
「……俺はルークだ」

「カノンさん、ルークさん。どうか、貴方たちの力を貸してもらえませんか。
実は今、竜宮が悪い奴らに狙われて大変なことになっているのです。
そこで協力者を求めてここへ来たのですが、あの男たちに捕らえられそうになって……。
カノンさん。貴方の勇気ある行動に救われました。どうか竜宮も救ってください」
「力を貸すって、どうやって?」
「とりあえず僕の背中に乗ってください」

カノンとルークがおそるおそるイルカに跨ると、マックスは体を跳ね上げ、空高くジャンプしました。
そして、二人を乗せたまま海へとダイブ……!

「Ohhhhh!! し、沈むーーー!」
「Bububu……ぶく、ぶく、ぶく」

-------------------------

同じ頃、海上には一艘の大きな船が停まっていました。

「カークス統括官、イルカには逃げられてしまいました」
「もういい。それよりアレは取り付けたんだろうな?」
「は、GPS機能付きの魚群探知機を取り付けておきました」
「ちくしょう、あの生意気なイルカめ。必ず探し出して捕まえてやる。
あいつは間違いなく《あの秘密》を知っているはずだからな」

カークスと呼ばれた男は、黒ずくめの男たちを見ながら憎々しげに言いました。

「我々の邪魔をする者はすべて消してかまわん、徹底的にやれ!」

-------------------------

一方、ルークとカノンは……。

「あれ?海の中なのに全然苦しくない?私、普段はすぐに苦しくなるのに」
「カノンさん、これが《水の中で呼吸できる能力》です。
本来はどの生物も持っている能力なんですが、普段の貴方たちはその力を封印されているようです。
今回は僕が力を貸して特別に解放しているんですよ」
「へえ、すごいね」
「ひょっとして奴らが狙っているというのは?」
「ええ、この《水の中で呼吸できる能力》の秘密です」

しばらくすると海の底に《絵にも描けない》美しい宮殿が見えてきました。

タイやヒラメに歓迎されながら宮殿の奥へと進むと、美しい女の人が二人を出迎えてくれました。

「ようこそ。私が竜宮の主、理沙姫です。話はマックスから聞きました」
「なんだ、ジャップかよ」
ふとつぶやいたルークの腹を、カノンの強烈な肘鉄が襲いました。

「Ouchi!この大砲(カノン)娘め!」

「だ……だいじょうぶですか?」
「気にしないで。それよりどうやったら理沙姫たちを助けられるの?」

「ええ、彼らが狙っているのは《水の中で呼吸できる能力》の秘密。
おそらくこの《遺伝子相伝・水遁の術》の巻物を渡せば皆が助かると思のですが……」
「ダメです、理沙姫!そんなことをすれば人間たちが大勢やってきて、海は陸と同じように荒らされてしまいます!」
「と、マックスが反対していて……」

そのときドーンと大きな振動と波が押し寄せてきました。

「な、なんなの?爆弾?」
「あいつら本物の大砲を撃ってきやがったんだ!」
「大変!このままじゃ竜宮が破壊されちゃう!」

「カノン、ルーク。
僕がオトリになりますから、その隙に理沙姫を連れて安全なところまで逃げてください!」
「待て!マックス、君が理沙姫と逃げた方が速い。姫を連れてここを離れろ!」
「それは……」

「ちょっと待って!」
カノンが何か閃いたようです。

「ねえ、これって竜宮だけの問題じゃなく、世界中の海の一大事なんでしょ。
どこかに援軍を頼むことはできないの?たとえば、竜王さまとか、海神さまとか」
「えっと、中東のポセイドン神なら先祖の代から懇意にしていただいて、今でも中元・歳暮を贈りあう仲ですが」
「それだ!」
「では、ちょっと頼んでみますね」
「ふう、どうやらオリエンタルな風習に助けられそうだな」

理沙姫は何かを念じるように目を閉じました。
二人が見守っていると、やがて理沙姫は目を開け、ほっぺに指でマルを描きました。

「オッケィ!ポセイドン神がセイレーンを遣わしてくださるそうです」
「セイレーン?」
「海の精霊です。特別な歌声で船乗りを惑わし、船を沈めると言われています」

-------------------------

船上にいたカークスたちは大パニックになりました。
なにしろ突然、空に「某コーヒーショップのロゴに似た女性」が現れ、異様な歌声を披露し始めたのですから。

「らーらーらららーーー♪」
「うああ!な、なんだ、この歌は!」
「耳がー、耳がー!」
「統括官!暴風域に突っ込んでしまいました。船が、船が沈みますーーー!」

悪い奴らは何が起こっているかも理解できないうちに、船とともに海に沈んでいきました。

-------------------------

「やったぞ!」
「ありがとう。カノン、ルーク!」
「私たちは何もしていないよ。セイレーンとマックスのおかげ」
「いいえ、僕たちはカノンの知恵とルークの勇気に救われたのです。
では、名残惜しいですが、お二人を陸までお送りしましょう」

「待ってください」と理沙姫は二人に四角い箱のようなものを差し出しました。
「これは玉手箱といいます。せめてものお礼に」
「ありがとう、理沙姫。また会いましょう、今度はもっと楽しい場所で」
「ええ、カノン。きっと楽しい出会いになるでしょう」
「おい、おい。俺の事も忘れないでくれよな」

-------------------------

元の浜辺に戻ったルークとカノンは、まだ夢を見ているようでした。
けれど夢ではない証拠に、二人の手には理沙姫から贈られた玉手箱があります。

「ねえ、何が入ってるのかな?開けてみようよ」
「いいのか?」
「いいって。早く開けよう!」

PON!

中に入っていたのは、一冊の本でした。
それは青いイルカの表紙に『ドルフィン・ジャンプ』と書かれた小説でした、とさ。

――銀河径一郎著 『ドルフィン・ジャンプ』 絶賛発売中!――


~end~




  

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No Title

うは~、なんちゅうか、ドルフィンを読んだ人なら十倍面白い
内輪ネタ炸裂やん(笑)

最初から最後まで爆笑の竜宮伝説にまとめて決めましたね!

以前から薄々感じてましたが、ia. さんのパロディーパワーには
おそれ入谷の騎士母神です(笑)

そうか、某星バックスのロゴは神話のセイレーンだったのか!
メトロポリタン美術館の写真みたら人魚というより足が海蛇みたいで
ドン引きでした。
正確には半女半鳥らしいですが、だとすると手で掴んでるのはどうやら
鳥の首になって尚更不気味かも。

さらにさらに
最後にセールスまでしていただいて恐縮です(笑)

  • 銀河径一郎 さん |
  • URL |
  • 2013/08/03 (12:07) |
  • Edit |
  • 返信

Re:銀河径一郎さん

>うは~、なんちゅうか、ドルフィンを読んだ人なら十倍面白い
>最後にセールスまでしていただいて恐縮です(笑)

というか、読んだ人だけにわかる楽屋オチが多すぎですね。
宣伝のつもりだったのにネタバレしちゃってすみません。

>そうか、某星バックスのロゴは神話のセイレーンだったのか!

あれ?
これは銀河さんに教えていただいたエピソードじゃなかったですか?
私の記憶違いだったようですね。
ちなみ店名は『白鯨』という小説に登場するスターバックという人物に由来するそうです。

私が書いたセイレーンが音痴なのは、怪鳥ハーピーとごっちゃになってしまったせいです。
途中で気付いたのですが、どっちも翼があるし、まあいいか、と。

もう少しコンパクトにまとめたかったのですが、ギャグとか考えていて長くなりました。
原作を荒らさないように気を付けていたんですが、だんだん調子に乗ってしまって……。
原作者に怒られなくてほっとしています。
  • from ia. |
  • 2013/08/03 (14:24)

No Title

ご無沙汰しています、shitsumaです。
ちょうど銀河さんの『ドルフィン・ジャンプ』を読み終えたところで、
なんとなく短編競作のことを思い出して懐かしい気分になり、
レイバックさんのブログからあちこち飛んでたんですが……。
まさかこんなパロディ小説に出会うとは(笑)

あちこちに出てくる聞き覚えのある単語やセリフに、
終始ニヤニヤさせられてしまいました。
ルークとカノンちゃんの掛け合いが楽しかったです。
パロディでも、やっぱりカノンちゃんは強いなあ(^皿^)
  • shitsuma さん |
  • 2013/10/23 (23:50) |
  • Edit |
  • 返信

Re:shitsumaさん

おひさしぶりです。
コメントありがとうございます。

久々にログインしてみたら、まさかの新コメントが!
普段ほとんど放置しているので、運命的なタイミングに感激です(笑)

>ちょうど銀河さんの『ドルフィン・ジャンプ』を読み終えたところで、
>なんとなく短編競作のことを思い出して懐かしい気分になり、
>レイバックさんのブログからあちこち飛んでたんですが……。

短編競作、懐かしいですね。
今は連絡を取れる方も少なくなっちゃったけど、
貴重な出会いの機会をもらえたと、今も感謝しています。


>まさかこんなパロディ小説に出会うとは(笑)

元々のキャラが素敵ですから、パロディを書くのは楽しかったですよ。

『ドルフィン・ジャンプ』面白かったですね。
私はSFや超常現象を扱った小説が苦手だったのですが、
この作品の前原稿になる『ドルフィン・ソング』を読んで、その認識が変わったんです。
読書の幅も広がって楽しい思いをさせてもらってます。

このブログはできるだけ閉鎖せず、遊びでいろいろ書こうかなと思っています。
良かったらまた遊びに来てみてください。
このところサボリ気味だったツイッターもまた書き込む予定です。
それでは!
  • from ia. |
  • 2013/10/25 (03:25)

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