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あんたのために書いてんじゃないんだからねっ

ショートストーリー&雑文。不定期で『タカッラマ・ラジュル』を連載中。

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幻想恋話~王子の恋ー後篇ー

さて、占い師の言葉通り、謎の美女と再会を果たした王子ですが……。
橋の向こう側には数十人の兵士が待ち伏せしており、今にも銃撃戦が始まりそうな勢いで銃を構えています。

その時、今度は背後から黒い戦闘服を着た一団が現れました。

彼らはG(ガーディアン)と呼ばれると王子の警護隊でした。
Gは常に悟られないよう王子を守り、日頃は王子ですらその存在を確認できないほどです。
今回「くれぐれもお一人で」と念押しする占い師を怪んだ王子は、Gの任務だけは解かなかったでした。

王子はGを従えたまま橋の中ほどにいる黒いドレスの女性の傍へ行き、その手を取りました。
女性は悲しげな声で言いました。

「なぜ約束通り、お一人で来てくれなかったのですか?」

「さすがにあんな安い映画みたいな話には騙されないよ。
それより君は誰?君も美人だけど、僕が捜していた女性ではないよね」

「私は隣国に雇われた者。橋の向こう側にいるのも隣国の兵士たちです」

女性は諦めたように全てを打ち明けてくれました。

バカ王子が一目惚れした女を探している。
その噂を聞きつけた隣国の王は、占い師に嘘の情報を告げさせて王子をおびき出し、その醜聞を利用してエネルギー利権の交渉を有利に進めようとしたのでした。
ただ本物の『黒いドレスの美女』が見付からなかった為、自分がダミーとして雇われたのだと。

「ふうん。思ったほどバカ王子じゃなくて残念だったね」

王子は橋の向こう側を振り返り、なおも銃を構えたままの隣国の兵士たちに向かって一喝しました。

「冗談はこのくらいにしないか?
それとも本気で我が国と戦争する気か!?」

隣国の計画はあまりにお粗末だったため、今回の件は不問になりました。



事件の翌日。
Gの隊長に伴われて、一人の女性隊員が王子のもとを訪れました。
それは紛れもなく、あの『黒いドレスの美女』でした。

「申し訳ありません、王子。あれは私の部下のミスだったようです」

隊長の説明によると、あの日ドレス姿でパーティに潜入していた新米の女性Gが、うっかりその姿を王子に見咎められ逃げ出してしまったのだと。
彼女は自身の失態を誰にも言えず、けれど昨夜の事件を受け、想像以上に事態が大事になっていることに気づき、ようやく隊長に打ち明けたのだそうです。

Gは王子にすらその存在を気づかせないよう行動するのが鉄則です。
道理でパーティの招待客も女性を知らないはずでした。

「なるほどね。身近に居すぎて気づかなかったわけか」

「王子が私を探してくれていることは存じていましたが、なかなか言い出せませんでした。申し訳ありません。
あの……だって……恥ずかしかったんですもの」

念願の『黒いドレスの美女』に会えた王子は、その言葉を聞いてさらに顔をほころばせました。

しばらく後に行われた王室の結婚式はそれはそれは盛大で、バカ王子のロマンスと共に、しばらくは近隣諸国の語り草になったと言います。

【目次】

  

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