あんたのために書いてんじゃないんだからねっ
ショートストーリー&雑文。不定期で『タカッラマ・ラジュル』を連載中。
[PR]
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
幻想恋話~王子の恋ー後篇ー
さて、占い師の言葉通り、謎の美女と再会を果たした王子ですが……。
橋の向こう側には数十人の兵士が待ち伏せしており、今にも銃撃戦が始まりそうな勢いで銃を構えています。
その時、今度は背後から黒い戦闘服を着た一団が現れました。
彼らはG(ガーディアン)と呼ばれると王子の警護隊でした。
Gは常に悟られないよう王子を守り、日頃は王子ですらその存在を確認できないほどです。
今回「くれぐれもお一人で」と念押しする占い師を怪んだ王子は、Gの任務だけは解かなかったでした。
王子はGを従えたまま橋の中ほどにいる黒いドレスの女性の傍へ行き、その手を取りました。
女性は悲しげな声で言いました。
「なぜ約束通り、お一人で来てくれなかったのですか?」
「さすがにあんな安い映画みたいな話には騙されないよ。
それより君は誰?君も美人だけど、僕が捜していた女性ではないよね」
「私は隣国に雇われた者。橋の向こう側にいるのも隣国の兵士たちです」
女性は諦めたように全てを打ち明けてくれました。
バカ王子が一目惚れした女を探している。
その噂を聞きつけた隣国の王は、占い師に嘘の情報を告げさせて王子をおびき出し、その醜聞を利用してエネルギー利権の交渉を有利に進めようとしたのでした。
ただ本物の『黒いドレスの美女』が見付からなかった為、自分がダミーとして雇われたのだと。
「ふうん。思ったほどバカ王子じゃなくて残念だったね」
王子は橋の向こう側を振り返り、なおも銃を構えたままの隣国の兵士たちに向かって一喝しました。
「冗談はこのくらいにしないか?
それとも本気で我が国と戦争する気か!?」
隣国の計画はあまりにお粗末だったため、今回の件は不問になりました。
事件の翌日。
Gの隊長に伴われて、一人の女性隊員が王子のもとを訪れました。
それは紛れもなく、あの『黒いドレスの美女』でした。
「申し訳ありません、王子。あれは私の部下のミスだったようです」
隊長の説明によると、あの日ドレス姿でパーティに潜入していた新米の女性Gが、うっかりその姿を王子に見咎められ逃げ出してしまったのだと。
彼女は自身の失態を誰にも言えず、けれど昨夜の事件を受け、想像以上に事態が大事になっていることに気づき、ようやく隊長に打ち明けたのだそうです。
Gは王子にすらその存在を気づかせないよう行動するのが鉄則です。
道理でパーティの招待客も女性を知らないはずでした。
「なるほどね。身近に居すぎて気づかなかったわけか」
「王子が私を探してくれていることは存じていましたが、なかなか言い出せませんでした。申し訳ありません。
あの……だって……恥ずかしかったんですもの」
念願の『黒いドレスの美女』に会えた王子は、その言葉を聞いてさらに顔をほころばせました。
しばらく後に行われた王室の結婚式はそれはそれは盛大で、バカ王子のロマンスと共に、しばらくは近隣諸国の語り草になったと言います。
【目次】
橋の向こう側には数十人の兵士が待ち伏せしており、今にも銃撃戦が始まりそうな勢いで銃を構えています。
その時、今度は背後から黒い戦闘服を着た一団が現れました。
彼らはG(ガーディアン)と呼ばれると王子の警護隊でした。
Gは常に悟られないよう王子を守り、日頃は王子ですらその存在を確認できないほどです。
今回「くれぐれもお一人で」と念押しする占い師を怪んだ王子は、Gの任務だけは解かなかったでした。
王子はGを従えたまま橋の中ほどにいる黒いドレスの女性の傍へ行き、その手を取りました。
女性は悲しげな声で言いました。
「なぜ約束通り、お一人で来てくれなかったのですか?」
「さすがにあんな安い映画みたいな話には騙されないよ。
それより君は誰?君も美人だけど、僕が捜していた女性ではないよね」
「私は隣国に雇われた者。橋の向こう側にいるのも隣国の兵士たちです」
女性は諦めたように全てを打ち明けてくれました。
バカ王子が一目惚れした女を探している。
その噂を聞きつけた隣国の王は、占い師に嘘の情報を告げさせて王子をおびき出し、その醜聞を利用してエネルギー利権の交渉を有利に進めようとしたのでした。
ただ本物の『黒いドレスの美女』が見付からなかった為、自分がダミーとして雇われたのだと。
「ふうん。思ったほどバカ王子じゃなくて残念だったね」
王子は橋の向こう側を振り返り、なおも銃を構えたままの隣国の兵士たちに向かって一喝しました。
「冗談はこのくらいにしないか?
それとも本気で我が国と戦争する気か!?」
隣国の計画はあまりにお粗末だったため、今回の件は不問になりました。
事件の翌日。
Gの隊長に伴われて、一人の女性隊員が王子のもとを訪れました。
それは紛れもなく、あの『黒いドレスの美女』でした。
「申し訳ありません、王子。あれは私の部下のミスだったようです」
隊長の説明によると、あの日ドレス姿でパーティに潜入していた新米の女性Gが、うっかりその姿を王子に見咎められ逃げ出してしまったのだと。
彼女は自身の失態を誰にも言えず、けれど昨夜の事件を受け、想像以上に事態が大事になっていることに気づき、ようやく隊長に打ち明けたのだそうです。
Gは王子にすらその存在を気づかせないよう行動するのが鉄則です。
道理でパーティの招待客も女性を知らないはずでした。
「なるほどね。身近に居すぎて気づかなかったわけか」
「王子が私を探してくれていることは存じていましたが、なかなか言い出せませんでした。申し訳ありません。
あの……だって……恥ずかしかったんですもの」
念願の『黒いドレスの美女』に会えた王子は、その言葉を聞いてさらに顔をほころばせました。
しばらく後に行われた王室の結婚式はそれはそれは盛大で、バカ王子のロマンスと共に、しばらくは近隣諸国の語り草になったと言います。
【目次】
PR