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あんたのために書いてんじゃないんだからねっ

ショートストーリー&雑文。不定期で『タカッラマ・ラジュル』を連載中。

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タカッラマ・ラジュル~千里眼の男

世の中には特殊な能力を持つ「超能力者」がいると言われます。
私の母国にも、かつて「千里眼」と呼ばれる透視能力を持つ女性がいましたが、その真偽を疑われ、世間の好奇な視線にさらされて、心を病んで亡くなったそうです。

それらは本物の能力なのか、トリックなのか。今宵はそんなお話です。

◇◇◇

バット(蝙蝠)と名乗るマジシャンがいました。
バットはクロースアップと呼ばれる、観客の至近距離で演じるマジックが得意で、中でも人気だったのはタロットを使った占いマジックでした。
『一分後の未来』と名づけられたそれは、いわゆる予言マジックでした。

『一分後の未来』には、1組11枚ずつのタロットが2組が使われます。
カードを観客にあらためてもらった後、バットと観客は向かい合って座り、バットには目隠しがされます。
そしてバットが「貴方の一分後の未来を予言します」と宣言します。

次に観客は11枚の内から、好きなカードを5枚を選び、テーブルに十字型に並べます。
最後にその十字型の中から、さらに好きなカードを1枚選んでもらいます。
バットも同じ動作を繰り返します。
するとなぜかバットと観客はまったく同じ図柄のタロットを選んでいる……というマジックでした。

実はそのマジックを考案したのは彼の一人の弟子でした。
その弟子は『一分後の未来』を考案した後、ある事情からバットに破門されていたのです。

バットを逆恨みした元・弟子は復讐を企てました。

トリックを熟知していた彼は、眼鏡と帽子で顔を隠しながら観客に紛れ込み、『一分後の未来』の観客に選ばれることに成功しました。

目隠しされたバットは、いつも通り「一分後の未来を予言します」と宣言しました。
一分経ち、十字に並んだカードから二人が一枚ずつカードを引くと……。
バットが選んだカードは『運命の輪』、元・弟子は『審判』でした。

「おや、先生の未来と僕の未来は違うようですね」

元・弟子は眼鏡と帽子を取り、満面の笑みを浮かべました。
彼は別のタロットを隠し持っており、カードを開く直前にすばやく手元のカードとすり替えたのでした。

目隠しをはずしたバットは「君だったのか」と言いながら、手にしたカードを落としました。
その手にはなぜかもう一枚、別のカードが握られていたのです。
『審判』のカードでした。

「どうして?」

驚く元・弟子をよそに、他の観客はこれらすべてを演出だと思ったようで、バットに大きな拍手を送りました。
バットは恭しく頭を下げて席を立ちました。

のちにその事件の顛末を知ったバットの弟子たちは「バットには本当に未来を見ることが出来るのかもしれない」と噂し合ったということです。


タロット(魔術師のカード)

【目次】
  

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