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あんたのために書いてんじゃないんだからねっ

ショートストーリー&雑文。不定期で『タカッラマ・ラジュル』を連載中。

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幻想恋話~王子の恋ー前篇ー

古今東西、美女が王子に見初められるというサクセスストーリーがたくさんあります。
元来、王子というのは「惚れっぽいもの」のようです。
ただ、周囲はたいてい迷惑をこうむったり、振り回されたりしますが。

今宵はそんな王子のロマンスです。

◇◇◇

とある小国の王子が、近隣の国が開催するパーティに招かれた時の事。
顔見知りの招待客と談笑していた王子は熱い視線を感じました。
そこにいたのは黒いドレス姿の美しい女性。初めてみる顔でしたが、王子は一目で恋に落ちました。

ところが王子が声を描けた途端、その女性は驚いたように逃げ出し、会場を去ってしまったのでした。

あれほど熱い視線を感じたのだから、きっと僕に気があるに違いない。
彼女は恥ずかしがって逃げちゃっただけなんだ。
そう考えた王子は、パーティの後も方々に問い合わせて『黒いドレスの美女』を探しましたが、誰も彼女の素性を知らないようでした。

そんな折、噂を聞きつけたのか、一人の占い師が王子の前に現れました。
その占い師は「その女性は王子の前世の伴侶であった女性であるが、現世では大変な目に遭っている」と言うのでした。

「彼女は某大国に利用され、スパイとして働かされているのです」

「スパイ?『はにぃ・とらっぷ』というヤツか?」

「いいえ、『はにぃ・とらっぷ』ではございません。
彼女は王子暗殺を命じられてパーティに潜入した殺し屋なのです。
しかし、貴方様に気づかれて失敗。そのまま逃走を続けている為、彼女を処罰しようと某大国はその行方を探しております。
一刻も早く見つけ出さねば、彼女が殺されてしまうでしょう」

「彼女の居所がわかるのかい?」

「はい。私の占いによれば、次の満月の夜、隣国との国境の橋の上で黒いドレスの女性と遭えると出ております。
誰にも邪魔されず二人きりで遭えば、前世の記憶も戻り、事態は好転するでしょう」

「一人で隣国との国境へ行けと?」

近年、隣国とは新型エネルギーの利権を巡って小さな諍いが続いています。
軽率な行動は躊躇われましたが「彼女を救う唯一のチャンスです」という占い師の言葉が後押しとなり、次の満月の夜、王子は国境の橋へと向かうことにしました。



そして、満月の夜。
占い師の言葉通り、国境の橋の上に黒いドレス姿の女性が佇んでいるのが見えました。
そして橋の向こう側には屈強な兵士が数十人。王子の姿を見咎めると一斉に銃を構えたのでした。

◇◇◇

長くなりそうなので、今宵はこのあたりで。
また明日にでも続きをお話しすることとしましょう。

【目次】

  

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