あんたのために書いてんじゃないんだからねっ
ショートストーリー&雑文。不定期で『タカッラマ・ラジュル』を連載中。
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奇妙な客が集まるBAR~幻の彼女
こんばんは。
うちはどこにでもある、ごくありふれたBARなんですが、何故か奇妙な体験をされたお客さんが集まってくるんですよ。
ほら、今夜も……。
◇
やあ、マスター。
バレンタインチョコもらった?
えっ?義理ばっかり?ははは。じゃあ俺と同じだ。
でもさ、バレンタインなんてただのイベントなんだから、チョコをいくつもらえるとか、もらえないとか、気にしない方がいいよね。
いやね、昔、俺の友達がバレンタインに怖い体験をしたことがあってさ……。
うちはどこにでもある、ごくありふれたBARなんですが、何故か奇妙な体験をされたお客さんが集まってくるんですよ。
ほら、今夜も……。
◇
やあ、マスター。
バレンタインチョコもらった?
えっ?義理ばっかり?ははは。じゃあ俺と同じだ。
でもさ、バレンタインなんてただのイベントなんだから、チョコをいくつもらえるとか、もらえないとか、気にしない方がいいよね。
いやね、昔、俺の友達がバレンタインに怖い体験をしたことがあってさ……。
その友人は学生時代、古いアパートに住んでたんだ。
大家のおばさんが親切なだけが取り柄の、2階建てのボロいアパート。
ある時、俺は数人の友人とそいつの部屋に遊びに行ったんだ。
バレンタインも近かったし「今年は何個くらいチョコがもらえるかな」なんて話になって。
そのうち一人の友人が、その部屋の主をからかったんだ。
「まあ、こんなボロアパートに住んでたんじゃ、彼女なんて出来ないよな」って。
友人は冗談のつもりだったんだろうけど、からかわれた『アパート君』はその言い方にカチンときたらしい。
ムッとしながら「俺だって彼女くらいいるよ」って言った。
「嘘つけ」
「嘘じゃないよ」
「じゃあ、証拠を見せてみろよ!」
険悪なムードになって、さすがに俺たちも止めに入ろうと思っていたとき、『アパート君』の携帯にメールの着信が入ったんだ。
『アパート君』はメールを読み、「彼女からだよ」と言ってそのメールを見せてくれた。
<この間はありがとう。バレンタインは楽しみにしていてね>
メールの内容はそんな感じだったと思う。
送信者は『008』。
彼女にしては変な登録名だなあと思ったけど、あまり気にしなかった。
その友人も謝って、その後はまた和やかな雰囲気に戻ったんだ。
ところが数日後、たぶんバレンタインの翌日だったと思う。
『アパート君』が真っ青な顔で俺のところを訪ねてきたんだよ。
「おかしなことが続くから、自分の部屋を調べてくれないか?」って。
「あの時はからかわれたのが悔しくて『彼女がいる』と嘘を言った。ちょうど良いタイミングでそれらしい内容のメールが来たから、彼女からだと偽ってメールも見せた。
だけど昨日に部屋帰ったら、メールの送り主からのバレンタインチョコが置いてあって……」
俺はその時期、引越し屋でバイトしていたから、彼の頼みをきいて部屋を調べたんだ。
……出てきたよ。盗聴器が。
バイト先で借りた盗聴器の電波測定器が役に立ったわけだ。
メールの送り主?
彼のアパートの大家のおばさんだったんだよ。
008→おおや→大家、ってわけ。
『アパート君』は、あの日の大家からのメールのタイミングの良さを不審に思っていたうえ、部屋にチョコが置いてあったから、さすがに気味が悪くなったんだってさ。
だって大家は、彼の留守中に合い鍵を使って部屋に入り込んだってことだろう?
大家のおばさんが何故そんな真似をしたのかは、今もわからない。
『アパート君』は何も言わず、すぐに部屋を引き払ったからね。
今は彼も結婚して幸せに暮らしているよ。郊外に家も買ったらしい。
もうアパート暮しはコリゴリだってさ。
大家のおばさんが親切なだけが取り柄の、2階建てのボロいアパート。
ある時、俺は数人の友人とそいつの部屋に遊びに行ったんだ。
バレンタインも近かったし「今年は何個くらいチョコがもらえるかな」なんて話になって。
そのうち一人の友人が、その部屋の主をからかったんだ。
「まあ、こんなボロアパートに住んでたんじゃ、彼女なんて出来ないよな」って。
友人は冗談のつもりだったんだろうけど、からかわれた『アパート君』はその言い方にカチンときたらしい。
ムッとしながら「俺だって彼女くらいいるよ」って言った。
「嘘つけ」
「嘘じゃないよ」
「じゃあ、証拠を見せてみろよ!」
険悪なムードになって、さすがに俺たちも止めに入ろうと思っていたとき、『アパート君』の携帯にメールの着信が入ったんだ。
『アパート君』はメールを読み、「彼女からだよ」と言ってそのメールを見せてくれた。
<この間はありがとう。バレンタインは楽しみにしていてね>
メールの内容はそんな感じだったと思う。
送信者は『008』。
彼女にしては変な登録名だなあと思ったけど、あまり気にしなかった。
その友人も謝って、その後はまた和やかな雰囲気に戻ったんだ。
ところが数日後、たぶんバレンタインの翌日だったと思う。
『アパート君』が真っ青な顔で俺のところを訪ねてきたんだよ。
「おかしなことが続くから、自分の部屋を調べてくれないか?」って。
「あの時はからかわれたのが悔しくて『彼女がいる』と嘘を言った。ちょうど良いタイミングでそれらしい内容のメールが来たから、彼女からだと偽ってメールも見せた。
だけど昨日に部屋帰ったら、メールの送り主からのバレンタインチョコが置いてあって……」
俺はその時期、引越し屋でバイトしていたから、彼の頼みをきいて部屋を調べたんだ。
……出てきたよ。盗聴器が。
バイト先で借りた盗聴器の電波測定器が役に立ったわけだ。
メールの送り主?
彼のアパートの大家のおばさんだったんだよ。
008→おおや→大家、ってわけ。
『アパート君』は、あの日の大家からのメールのタイミングの良さを不審に思っていたうえ、部屋にチョコが置いてあったから、さすがに気味が悪くなったんだってさ。
だって大家は、彼の留守中に合い鍵を使って部屋に入り込んだってことだろう?
大家のおばさんが何故そんな真似をしたのかは、今もわからない。
『アパート君』は何も言わず、すぐに部屋を引き払ったからね。
今は彼も結婚して幸せに暮らしているよ。郊外に家も買ったらしい。
もうアパート暮しはコリゴリだってさ。
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COMMENT
No Title
>……出てきたよ。盗聴器が。
怖いです、現代の怪談ですね(^_^;)
>大家のおばさんが何故そんな真似をしたのかは、今もわからない。
もしかして大家が壇蜜だとしたら、ちょっと嬉しいかも (またそれかい……笑)
Re:銀河径一郎さん
最初、犯人は『アパート君のママ』というオチを用意していたのですが、
怖すぎるので止めました。
>もしかして大家が壇蜜だとしたら、ちょっと嬉しいかも
そうだったらストーリーが変わっちゃいそうですね(笑)
友人たちが大勢押しかけ、そのアパートの空き部屋を奪い合って闘うとか。
今回の大家さんは柴田理恵さんみたいな普通のおばさんってことにしておいてください。