はてなの国【ｓｓ】

日本国からミステリが消えた。

きっかけは、一人の少年が引き起こした孤島での連続殺人だった。
事件が某推理小説を模したものだった為、推理小説の表現に規制を求める運動が起こり、当時問題で山積でアップアップしていた眠主党政権は、どさくさに『児童ミステリ規制法案』を可決した。

過剰に反応したマスコミは『ミステリ』という言葉を放送禁止用語として使用を自粛した。
結果、あらゆるジャンルのミステリが自粛され、ある時期からは「宇宙の謎」という言葉さえ「宇宙のはてな？」と言い換えられる始末だった。

迫害を受けたミステリマニアたちは密かに結集、‘赤い謎’という秘密結社を設立し、地下に潜って破壊活動を始めた。
犯行はミステリの粋を極めた非常に手の込んだトリックによって遂行された。
時刻表を駆使したアリバイトリックも完璧だった。

相次ぐ不可解な連続犯罪に、警察も手をこまねいているわけではなかった。
‘赤い謎’に対抗すべく、海外から名探偵を招集することにしたのだ。

「長官、名探偵なんて本当にいるんですか？」
「英国のスコットランドヤードなら一人くらいいるだろう」
「はあ」

『Want　Great detective！(求む、名探偵！)』

日本から突如届いたメールに、スコットランドヤードの警察官たちは戸惑った。

「優秀な興信所を紹介してくれという意味でしょうか？」
「日本の警察が英国にそのような要請してくるとは思えないが」
「もう一度問い合わせてみましょう」

『What E-mail？(どういうこと？)』

いち早くそのメールを傍受した‘赤い謎’のハッキング部隊は、ちょっとした悪戯を仕込み、改めて日本の警察に送った。

『 hat E-na ?(はてな？)』