あんたのために書いてんじゃないんだからねっ
ショートストーリー&雑文。不定期で『タカッラマ・ラジュル』を連載中。
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タカッラマ・ラジュル~ドッペルゲンガーの殺人
『幻の女』という物語をご存知ですか?
一人の男に殺人容疑がかけられ、唯一彼のアリバイを証明してくれる女の存在を、目撃者たちは否定するという。
古いけれどわりと有名なサスペンス・ミステリです。
今宵はそれとは真逆の、「大勢がいないはずの人を見た」という事件の話です。
◇◇◇
マリコという心理カウンセラーのもとに、夫婦の不仲によって心を病んでいるルース夫人と言う女性が通っていました。
その人物はある日、別のこんな悩みを打ち明けたのです。
「先生、最近、友人たちからおかしな話ばかり聞かされるの」
彼女は、友人たちからたびたび、彼女が行ったはずのない日時に「貴方に会った」「話しかけたのに無視された」と叱られるのだと言います。
「それでね。ある方がドッペルゲンガ―じゃないか?と仰ったの」
ドッペルゲンガ―とは自分とそっくりの人間が別の場所に姿を現す現象です。
小説や映画の題材とされることも多く、その真偽は不確かですが、「自分のドッペルゲンガーを見ると死ぬ」とも言われています。
「怖いわ、先生。私、死ぬのかしら?」
けれど数週間後、死亡したのは夫人ではなく、夫のルース氏でした。
自宅から数十キロ離れた別荘で、愛人と共に何者かに殺害されたのでした。
真っ先に疑われたのはルース夫人でした。
別荘付近で夫人のものに似た車が目撃されていたからです。
けれどその日、彼女には大勢の目撃者がいました。
事件があったとされる頃、テレビの公開討論会の生中継があり、その観覧席にいたルース夫人を見たと彼女の知人から連絡があったのです。
警察が調べたところ、映像にははっきりと夫人の姿が映っていました。
事件は「別荘を狙った強盗の仕業」と結論付けられたようでした。
では、別荘付近で目撃された人物は誰だったのか?
バカげた話ですが、マリコはテレビに映っていたのはドッペルゲンガーではなかったか、と疑いました。
妙にあの話が引っかかっていたのです。
あの日、夫の情事を知った夫人が夫を殺害し、たまたま出現したドッペルゲンガーの方がテレビに映ったのだとしたら?
マリコはそんな疑惑を打ち消しました。
ドッペルゲンガ―は脳疾患などによる自己像幻視(臨死体験など)か、解離性障害などにより自分の行動を記憶していない状態だと医学的に認識されています。
ルース夫人の場合、夫婦の不仲による寂しさが「誰かに見ていてほしい」という願望となり、妄想を創り出したのでしょう。
結局、事件の犯人は捕まらず、真相も解らずじまいでした。
なぜならそれ以降、誰もルース夫人の姿を見た者はいなかったからです。
(2013.11.13 改稿)
【目次】
一人の男に殺人容疑がかけられ、唯一彼のアリバイを証明してくれる女の存在を、目撃者たちは否定するという。
古いけれどわりと有名なサスペンス・ミステリです。
今宵はそれとは真逆の、「大勢がいないはずの人を見た」という事件の話です。
◇◇◇
マリコという心理カウンセラーのもとに、夫婦の不仲によって心を病んでいるルース夫人と言う女性が通っていました。
その人物はある日、別のこんな悩みを打ち明けたのです。
「先生、最近、友人たちからおかしな話ばかり聞かされるの」
彼女は、友人たちからたびたび、彼女が行ったはずのない日時に「貴方に会った」「話しかけたのに無視された」と叱られるのだと言います。
「それでね。ある方がドッペルゲンガ―じゃないか?と仰ったの」
ドッペルゲンガ―とは自分とそっくりの人間が別の場所に姿を現す現象です。
小説や映画の題材とされることも多く、その真偽は不確かですが、「自分のドッペルゲンガーを見ると死ぬ」とも言われています。
「怖いわ、先生。私、死ぬのかしら?」
けれど数週間後、死亡したのは夫人ではなく、夫のルース氏でした。
自宅から数十キロ離れた別荘で、愛人と共に何者かに殺害されたのでした。
真っ先に疑われたのはルース夫人でした。
別荘付近で夫人のものに似た車が目撃されていたからです。
けれどその日、彼女には大勢の目撃者がいました。
事件があったとされる頃、テレビの公開討論会の生中継があり、その観覧席にいたルース夫人を見たと彼女の知人から連絡があったのです。
警察が調べたところ、映像にははっきりと夫人の姿が映っていました。
事件は「別荘を狙った強盗の仕業」と結論付けられたようでした。
では、別荘付近で目撃された人物は誰だったのか?
バカげた話ですが、マリコはテレビに映っていたのはドッペルゲンガーではなかったか、と疑いました。
妙にあの話が引っかかっていたのです。
あの日、夫の情事を知った夫人が夫を殺害し、たまたま出現したドッペルゲンガーの方がテレビに映ったのだとしたら?
マリコはそんな疑惑を打ち消しました。
ドッペルゲンガ―は脳疾患などによる自己像幻視(臨死体験など)か、解離性障害などにより自分の行動を記憶していない状態だと医学的に認識されています。
ルース夫人の場合、夫婦の不仲による寂しさが「誰かに見ていてほしい」という願望となり、妄想を創り出したのでしょう。
結局、事件の犯人は捕まらず、真相も解らずじまいでした。
なぜならそれ以降、誰もルース夫人の姿を見た者はいなかったからです。
(2013.11.13 改稿)
【目次】
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COMMENT
無題
ドッペルゲンガ―の出現傾向を突き止めて、それをアリバイ作りに利用するなんて!
それほどアリバイは完璧なのに姿を隠してしまったのは罪悪感からですかね。
恵比寿で初めて入った喫茶店で店員さんから普通の接客の度を越えた期待の目を向けられて驚いたことがありました。いかにも旧知の仲で話しかけてくれるのを待ってる感じで、たぶん私にそっくりな人を知ってたんだなと結論しましたが、もしかしてドッペルゲンガ―だったのかも(笑)
Re:銀河径一郎さん
ちょっと強引でしたね(笑)
このシリーズはトリックよりオカルト重視なので許してください。
>恵比寿で初めて入った喫茶店で店員さんから普通の接客の度を越えた期待の目を向けられて驚いたことがありました。いかにも旧知の仲で話しかけてくれるのを待ってる感じで、たぶん私にそっくりな人を知ってたんだなと結論しましたが、もしかしてドッペルゲンガ―だったのかも(笑)
それはちょっと怖いですね(笑)
世界中には自分とそっくりな人が三人はいるとも言われますけど。
私はカラオケに出演している女優さんが私によく似ていて(しかも不倫がテーマのド演歌の曲で)、それを見た友人に爆笑されたことがあります。